兄弟ものがたり
「お前な、テニスでホームランってなんだよ。鮮やかに初戦敗退しやがって」

「でもすごかったよね。みんなびっくりしてたし!」

「あれは渾身の一打だった」


褒める真悠と、得意げな陽仁。そんな二人を、和人は呆れたように眺める。


「あと、お前が無駄に大声で騒ぐから、折角持ってきた弁当が差し入れと間違われて、食わずに消えるハメになったんだぞ。どうしてくれるんだよ」

「あれはすごかったね。ライオンの檻にお肉を放り込んだらあんな感じなのかな」

「現役女子高生の手作り弁当なんてそうそう食べられるもんじゃないって、みんな喜んでいたぞ」


何だか微妙に会話が噛み合っていない気がして、和人はため息を零す。

少し前を歩く真悠の後ろに、和人、そして陽仁と続き、行きは二人で全力疾走した道のりを、帰りは三人でのんびりと歩く。


「腹減ったなあ……」

「……誰のせいだと思ってんだよ」


時刻は、おやつの時間を少しばかり過ぎた頃。空腹のせいか、また段々と和人はイライラしてくる。
特に、お昼を食べ損ねる原因となった陽仁の声を聞いていると、イライラが増してくる。

これは何か言ってやらねば気が済まないと和人が口を開くと、前を歩く真悠が振り返って得意げに笑った。
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