兄弟ものがたり
「弁当のお返しに、これをお菓子でいっぱいにして返したい!最初は買った物でもいいかと思ったが、真悠は弁当を手作りしてくれたからな。これはおれも手作りで返すべきだろうと思い直したんだ。そして、手作りのお菓子といえば立河だと思い至った!」


陽仁の期待に満ちた瞳に見つめられ、立河はしばし唖然として固まったあと、観念したように力なく頷いた。


「……とりあえず、やれるだけやってみようか」

「さすが立河!ありがとう」


小躍りしそうな勢いで喜ぶ陽仁の姿を見れば、立河も、もう笑うしかない。


「ちなみに、何を作るかはもう決めてるの?」

「おれでも出来そうなものを頼む!」


無計画な陽仁に思わずつきそうになったため息を飲み込んで、立河は苦笑する。


「ちなみに三原くん、お菓子を作ったことは?」

「あるわけないだろ。あったらおまえの手を煩わせたりしない!」


至極最もな答えを、さも当たり前のように、しかも超絶爽やかに言い放たれれば、他に何も言えることはなかった。


「まあ……何とかなるかな。じゃあ行こっか。どうせぼくの家で作るんでしょ?」

「わるいな。おれの家だと、完成前に真悠に見つかる確率が極めて高い」


握り締めていた鞄を持ち直して立河が歩き出すと、その後ろに風呂敷で包み直した重箱を手に陽仁が続いた。





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