兄弟ものがたり
「本当は和人も誘って、一緒に作れたらよかったんだけどな。あいつ、今日はバイトだから無理だとか言って、さっさと帰っちまうし……」
水の上にボウルの底を当てて、チョコレートを固めながら、陽仁が不満げにボヤく。
「バイトならしょうがないよ。来たくても来られなかったんだろうから」
固まってきたチョコレートを、スプーンを使って小分けにしてバットに並べると、それを冷蔵庫に入れて冷やし固める。
その間に、オーブンから出して冷ましておいたクッキーを重箱に詰めていく。
「それはそうだが……。あいつ、真悠のことが好きなくせして天邪鬼だからな。これを機に、一気に距離が縮まればいいと思ったが……そんなに上手くはいかないか」
クッキーを詰めながらぼそっと呟いた陽仁に、思わず立河は手を止めた。
「え……和人くんって、佐川さんのことが好きなの?」
「本人から直接聞いたわけじゃないけどな。でも、あれは絶対そうだろう。見ていればわかる」
何でもないことのように言いながら、陽仁はどんどんクッキーを詰めていく。
形が歪だったり、割れてしまったものなんかを味見と称して時折口に放り込みながら、「うん、美味い!」と満足そうに頷きながら。
水の上にボウルの底を当てて、チョコレートを固めながら、陽仁が不満げにボヤく。
「バイトならしょうがないよ。来たくても来られなかったんだろうから」
固まってきたチョコレートを、スプーンを使って小分けにしてバットに並べると、それを冷蔵庫に入れて冷やし固める。
その間に、オーブンから出して冷ましておいたクッキーを重箱に詰めていく。
「それはそうだが……。あいつ、真悠のことが好きなくせして天邪鬼だからな。これを機に、一気に距離が縮まればいいと思ったが……そんなに上手くはいかないか」
クッキーを詰めながらぼそっと呟いた陽仁に、思わず立河は手を止めた。
「え……和人くんって、佐川さんのことが好きなの?」
「本人から直接聞いたわけじゃないけどな。でも、あれは絶対そうだろう。見ていればわかる」
何でもないことのように言いながら、陽仁はどんどんクッキーを詰めていく。
形が歪だったり、割れてしまったものなんかを味見と称して時折口に放り込みながら、「うん、美味い!」と満足そうに頷きながら。