兄弟ものがたり
そんな陽仁に、立河は衝撃を受けていた。だって、真悠のことを好きなのは、陽仁の方だと思っていたから。
だから、慣れないお菓子作りを頑張って、お礼をしたいのだと思っていたから。


「えっと……三原くんは?三原くんは、佐川さんのことをどう思ってるの?」

「好きだぞ」


おそるおそる問いかけた立河に、陽仁は即答する。


「そんなの当たり前だろ。だって真悠は、おれたちの家族みたいなものなんだから」


続いたその言葉に、立河は「家族……?」と呟くように繰り返す。それに陽仁は、力強く頷いた。


「そう、家族だ!おれは真悠のことを、家族として大切に思っているし、大好きだ」


屈託なく笑うその顔に、無理をしているような気配は感じられない。
てっきり、陽仁と和人、そして真悠の三角関係が出来上がっているのかと狼狽えたが、それは立河の取り越し苦労だったらしい。


「おれは、真悠も和人も好きだ。家族だからな。だから、二人には幸せになって欲しいと思っている。きっと真悠も、まんざらでもないと思うんだよな。まあ、おれの勘だけど」
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