兄弟ものがたり
若干ブスくれながら黙々とお菓子を平らげていく和人と、珍しく本気で怒る陽仁の喧嘩は、かなり凄まじいものだった。

「誘ったのにお前が来ないから悪いんだろ!」とか、「バイトだったんだからしょうがないだろ!大体、陽仁のくせに妙にシャレたことすんのがそもそもムカつくんだよ」などと言い合っていた二人。
不満げに唇を尖らせていた和人の姿は、まるで拗ねた子供のようで可愛かった。


「“大変だった”割には、楽しそうなお顔ですね」


真悠はいたずらっぽく笑い返して、ぬるまってきたホットチョコレートを啜る。


「あの二人、喧嘩していても本当はすごく仲がいいのがバレバレなんです」


本気で怒っていた陽仁でさえ、最後にはどこか呆れたような、しょうがない奴だと言いたげな表情でため息をつき、その数分後にはすっかりいつもの調子で和人に話しかけていた。

和人の方も、悪いことをしたとは思っていたのだろう。ちょっぴり気まずそうに、でもどうにか普段通りに陽仁と話をしていて、結局お菓子は真悠も含めた三人で仲良く分け合って食べた。


「私一人っ子なので、そういう二人を見ていると、兄弟っていいなって思うんです」
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