兄弟ものがたり
結局唸っても唸っても答えが導き出せなかった真悠は、諦めてカップを傾ける。

底の方にある溶け残ったチョコレートが、カップの傾きに合わせてとろりと口の中に落ちてくる。
顔を少し上に向けてカップを傾ける真悠を見て、星見はそっとスプーンを差し出した。


「佐川さんにとって、陽仁くんはお兄ちゃんで、和人くんは何なのか、答えが見つかるといいですね」


受け取ったスプーンでカップの中のチョコレートを掬いながら、真悠は曖昧に笑ってみせた。

陽仁はお兄ちゃんで、和人は何なのか、それを考える時真悠は、どうしようもなく不安になる。
小さい時から三人一緒で、陽仁と和人は喧嘩するほど仲がいい双子で、真悠はそれをそばで見ているのが好きなのだ。

だから、陽仁はお兄ちゃんなのに和人も同じように思えないことが、三人一緒、仲のいい双子という真悠の好きな光景を壊してしまうような気がして、怖かった。

曖昧な真悠の笑顔に、星見は心配そうに「どうかしましたか?」と声をかける。
真悠は、掬ったチョコレートと一緒にこみ上げた不安を飲み込んで、「何でもないです」と笑って答えた。
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