兄弟ものがたり
店を出たあと、真悠はスマートフォンを開いて思わず笑みを零す。
“今どこにいるのか”というメールが、陽仁と和人の両方から一件ずつ届いている。和人に至っては着信も一件入っている。

外に出るまで気がつかなかったが、どんよりと曇った空からは、パラパラと雨粒が落ちてきていた。

生憎、手持ちの傘はない。今日に限って、折りたたみ傘も学校のロッカーに入れっぱなしだ。
どうしたものかと考えながら返信を打っていると、送信する前に和人から二度目の着信が入った。


「もう……かずくんってば、せっかちなんだから」


あとちょっとで送信出来たのにそこに入った着信が何だか悔しくて、真悠はぼやきながらスマートフォンを操作して耳に当てる。


「あっ、やっと出た。お前、今どこにいるんだよ!」


“もしもし”を挟むこともなく、和人は開口一番そう言った。
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