兄弟ものがたり
「どこって、お店の前。ていうかかずくん、タイミング悪すぎ。あとちょっとで返信出来るところだったのに」

「返信?ああ、メールか。しょうがないだろ、お前が返信打ってる最中だって知らなかったんだから。それより、店ってどこの店だよ」

「んー……今はまだ内緒ということで」

「……どういうことだよ」


自分だけの特別な場所、秘密の場所、そういうのがあってもいいだろう。店の経営的には困るかもしれないけれど、真悠としてはここは一人で訪れたい場所なのだ。


「とりあえずお前、傘は持ってんのか?」

「持ってないよ。お店の人に借りるか、走って帰ろうか迷ってたとこ」


天気予報は曇りだったし、降水確率は午前も午後も五十%に届いていなかった。この状態で雨が降ってくるだなんて、誰が予想出来ただろう。


「とりあえず、スーパーで買い物もしなきゃと思ってたんだけど、かずくんは今日の夕飯何が食べたい?」

「はあ!?」


真悠は、ちらりと腕時計を見る。
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