兄弟ものがたり
「珍しいですね、前田さんが人を連れていらっしゃるなんて」
「今日は特別なんだ」
穏やかに笑って前田と談笑するその姿に、和人の目は釘付けになる。
立ち尽くす和人を視界に捉えて、その人はニッコリ笑った。
「いらっしゃいませ」
間違えようはずもない。
ここ数日、忘れようにも忘れられず、絶えず頭の中で響いていたあの声。
――「佐川さん」
電話越しに聞こえた、真悠を呼ぶ穏やかな声。
「何してんだ。そんなとこじゃ、メニューが見えないだろ」
不思議そうに首を傾げる前田には目もくれず、和人はただ真っすぐに目の前の笑顔を見つめる。
あの雨の日、真悠と一緒にいたであろう人物が、すぐ目の前に立っていた。
「お客様」
前田と和人以外はお客がいない店内に、柔らかい声が響く。
「今日は特別なんだ」
穏やかに笑って前田と談笑するその姿に、和人の目は釘付けになる。
立ち尽くす和人を視界に捉えて、その人はニッコリ笑った。
「いらっしゃいませ」
間違えようはずもない。
ここ数日、忘れようにも忘れられず、絶えず頭の中で響いていたあの声。
――「佐川さん」
電話越しに聞こえた、真悠を呼ぶ穏やかな声。
「何してんだ。そんなとこじゃ、メニューが見えないだろ」
不思議そうに首を傾げる前田には目もくれず、和人はただ真っすぐに目の前の笑顔を見つめる。
あの雨の日、真悠と一緒にいたであろう人物が、すぐ目の前に立っていた。
「お客様」
前田と和人以外はお客がいない店内に、柔らかい声が響く。