兄弟ものがたり
「どうかなさいましたか？」


男から目を離すことなく、真っすぐ進んで前田の隣に腰を下ろした和人は、顔を上げてもう一度、今度は先程よりも近くでじっくりとその顔を眺めた。

真悠とはいささか年が離れすぎているような気もするが、恋愛に年の差は関係ないという人もいる。
それに年齢を脇に置いてみれば、和人の想像通りの物腰柔らかな大人の雰囲気漂う男性だ。顔の造形も、悪くない。


「あたしは、いつものコーヒー。三原は？」


前田からメニューを差し出され、ちらりと視線を送ると、カウンターの向こうから驚いたような声が微かに聞こえた。


「……三原、さん？」


その微かな声に反応して顔を上げれば、目を見開いた男の姿が視界に写る。


「もしかして、三原 和人さんですか？」

「えっ、星見さん、三原と知り合いなの？」


驚いて声を上げる前田の隣で、和人も同じように驚いた。
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