兄弟ものがたり
「あっ、こら待てかずくん!逃げるな!!」


あとを追うようにパタパタとついてくる足音を聞きながら、和人は自分の部屋へと続く階段を早足に上る。


「うるさいバカ、ついてくるな」

「バカって言った方がバカなんだよ!バーカ」

「お前は小学生か!」


お互いに前を向いたまま口喧嘩を繰り返し、ひたすらに階段を上る。

上りきった先にある廊下で和人が振り返ると、ぴったりとあとをついてきていた真悠も足を止めた。


「はるくんの応援、行くって約束しちゃったんだから、ちゃんと準備してよね!」


ムスッと頬を膨らませる真悠をしばし見下ろして、和人は無言のまま廊下を突き進んで自分の部屋に向かう。


「こらぁあー!返事くらいしろー!!」


ドアノブに手をかけたところで、後ろからかなり勢いのついた体当たりを食らって、和人は前につんのめった。


「痛っ……!」


ガンッと音がするほど強く額をドアにぶつけて、和人は苦悶の声を漏らす。
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