兄弟ものがたり
5 それから……
「なあ、和人。おまえは、もう少し素直になった方がいいと思うぞ」

「……なんだよ、突然」

「いや、いつかは言おうと思っていたんだ。それがたまたまこのタイミングだったというだけで」

「……もしもそれを真面目に言ってるんだとしたら、捜し物しながらするのはおかしいだろ。お前のタイミングどうなってんだよ」


和人はため息をつきながら、テーブルの周りをぐるぐる回っている陽仁を眺める。

今日は自力で携帯電話を見付けて先ほど父は仕事へと向かったが、陽仁の方は未だうろうろと歩き回っていた。
その合間に突然、食後のコーヒーを飲んでいた和人に向かって言ったのだ。


「今急に思い出したんだ。思い出した時に言っておかないと、また忘れるだろ」


だからって、タイミングがおかし過ぎるだろとは思ったが、陽仁にそれを言ってもしょうがないことはわかりきっているので、和人はまたつきそうになったため息を、コーヒーと一緒に飲み込んだ。


「おまえは昔から、天邪鬼過ぎるんだ。好きな子の前で素直になれない気持ちはわからないでもないが、それだっていつかは卒業しないとな」

「ぶふっ!?」


和人は思わず、飲んでいたコーヒーを吹き出す。
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