兄弟ものがたり
「おいおい、大丈夫か?器官に入ったか?」


捜し物を中断して近寄ってこようとする陽仁を和人は手で制すると、反対の手を伸ばして箱ティッシュを引き寄せた。


「おまっ……突然、何言い出すんだよ!」


呼吸が落ち着き、テーブルも綺麗になったところで、和人は陽仁を睨み付ける。睨まれた陽仁はというと、不思議そうな顔で首を傾げていた。


「何って、だから、お前は好きな――」

「誰ももう一回言えとは言ってない!!そうじゃなくて、なんで俺に好きなやつがいるって前提で話をしてんだってことを!」

「おまえこそ何を言っているんだ?」


いるだろ、好きな人。と続いた言葉に、和人は口を開けたまま固まった。しばらくすると、わかりやすく顔が赤くなっていく。


「なっ、なに言ってんだこのバカ!別にそんなんじゃない。好きか嫌いかで言ったら好きよりだってだけで、それも別に、そういう好きとはまた別のあれであって、い、いわゆるその……違う方のあれだ!」

「どれだ?」


難解な問題に苦しむように眉根を寄せて考え込む陽仁に、和人は続く言葉が出てこなくて、ただあわあわと口を動かす。
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