兄弟ものがたり
階段を上り切って部屋に入る直前、強引に体を捻じ込んできた陽仁に顔を覗き込まれ、和人は咄嗟に顔を逸らした。もう、遅いけれど。
「想像しただけでそんな凶悪な顔になるくらいなら、素直になった方がいいぞ。取られてからじゃ遅いんだからな」
わかっている。そんなこと、言われなくてもわかっているけれど、そもそも真悠のことを好きだという前提で話が進んでいることに物申したい。
まあ、だからといって、じゃあ好きに物申してみろと言われたところで、きっと言葉に詰まるけれど。
「……そういうお前は、どうなんだよ」
「ん?わるい和人、よく聞こえなかった。今なんて言ったんだ?」
心の声が思わずぽろっと出てしまったような、そんな呟きだった。だから、改めて言いたくはなかったけれど、“なんでもない”で引くような陽仁でないことは、和人が一番よく知っている。
ため息をついて、もう一度。今度は、少しボリュームを上げて。
「そういうお前は、どうなんだよ。……ま、真悠のこと、どう思ってるんだよ」
「想像しただけでそんな凶悪な顔になるくらいなら、素直になった方がいいぞ。取られてからじゃ遅いんだからな」
わかっている。そんなこと、言われなくてもわかっているけれど、そもそも真悠のことを好きだという前提で話が進んでいることに物申したい。
まあ、だからといって、じゃあ好きに物申してみろと言われたところで、きっと言葉に詰まるけれど。
「……そういうお前は、どうなんだよ」
「ん?わるい和人、よく聞こえなかった。今なんて言ったんだ?」
心の声が思わずぽろっと出てしまったような、そんな呟きだった。だから、改めて言いたくはなかったけれど、“なんでもない”で引くような陽仁でないことは、和人が一番よく知っている。
ため息をついて、もう一度。今度は、少しボリュームを上げて。
「そういうお前は、どうなんだよ。……ま、真悠のこと、どう思ってるんだよ」