兄弟ものがたり
もうこれ以上は付き合っていられないというか、兄弟で好きな人の話をするとか恥ずかし過ぎると、和人が逃げるように部屋を出ると、階段の手前で腕を掴まれた。
「でもこれは大事な話なんだ和人。おまえと真悠が幸せになってくれたら、おれは――」
そこで陽仁は「あっ」と小さく呟いた。その呟きに、和人は振り返る。
「なにが“あっ”なんだ」
「いや、別に深い意味はない。ただちょっと、“あっ”と言ってみたくなっただけだ」
「だとしたらタイミングがおかしいだろ。ほんとは何なんだよ」
「本当だぞ!これから大事な話をしようという時に、おれは発声練習をしていなかったことを思い出したんだ」
「仮にそうだとしたって、話の途中に発声練習を挟む奴がどこにいんだよ!」
いや、だからこれはその……と怪しく視線をさ迷わせたあと、陽仁はガシッと和人の両肩を掴んだ。
「いいか、和人!おれは兄として、おまえと真悠の幸せを願っている。それはもう心からだ!だからいいな、おまえは素直になれ。そうすれば、幸せはもう目の前だ!!」
廊下で突然大声を出す陽仁に、和人はリビングのドアを閉めたかどうかが気になった。
もしも開いていたら、真悠に全部聞こえていることになる。
「でもこれは大事な話なんだ和人。おまえと真悠が幸せになってくれたら、おれは――」
そこで陽仁は「あっ」と小さく呟いた。その呟きに、和人は振り返る。
「なにが“あっ”なんだ」
「いや、別に深い意味はない。ただちょっと、“あっ”と言ってみたくなっただけだ」
「だとしたらタイミングがおかしいだろ。ほんとは何なんだよ」
「本当だぞ!これから大事な話をしようという時に、おれは発声練習をしていなかったことを思い出したんだ」
「仮にそうだとしたって、話の途中に発声練習を挟む奴がどこにいんだよ!」
いや、だからこれはその……と怪しく視線をさ迷わせたあと、陽仁はガシッと和人の両肩を掴んだ。
「いいか、和人!おれは兄として、おまえと真悠の幸せを願っている。それはもう心からだ!だからいいな、おまえは素直になれ。そうすれば、幸せはもう目の前だ!!」
廊下で突然大声を出す陽仁に、和人はリビングのドアを閉めたかどうかが気になった。
もしも開いていたら、真悠に全部聞こえていることになる。