兄弟ものがたり
「そうなんだけど、でもほら!ピクニックといえば、やっぱりお弁当は欠かせないでしょ?」

「そうだな!ピクニックといったらやっぱり弁当だ」

「いや、ピクニックじゃねえだろ。こいつのど下手くそなテニスを少しでもマシにするために、運動公園に行くだけだぞ」


窓から見る限り天気はとても良いので、最高にピクニック日和ではあるけれど、三人の本日の予定はピクニックではない。
テニスでホームランをぶちかます陽仁に、野球を忘れさせてテニスのやり方を叩きこむのが本日の予定だ。

かつてサッカーから野球に転身する時も、休日に真悠と和人がこうして練習に付き合っていた。いわばこれは、年中行事みたいなものである。


「せっかく今日はバイトも学校もない貴重な休日だっていうのに……」

「そんな貴重な休日にスポーツで汗を流すなんて、最高じゃないか!」

「どこがだよ」


和人がため息をつくと、それに被せるようにして「出来た!」と真悠の声が響いた。


「よし、急ごう!大丈夫、走れば間に合う」


自信満々の真悠と、「そうだな!」と走る気満々の陽仁。そんな二人に挟まれた和人は、まだ何もしていないのに、既に疲れの滲むため息を零した。





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