兄弟ものがたり
――「お前と真悠が幸せになってくれたら、おれは――」


あの時、陽仁は本当は何を言おうとしたのだろう。
誤魔化し方が下手過ぎて、誤魔化していることがバレバレで、何かを隠そうとしたのだとすぐにわかる。

陽仁は、何を隠したのだろう。本当は、何と言うつもりだったのだろう。

今振り返れば、何かわかるだろうか。一人後ろを走る陽仁の表情を見れば、何かが掴めるだろうか。

気になって、気にかかって、振り返ろうとしたところで――


「あっ、あと三分だ」


真悠の声が聞こえた。意識がそちらに、持っていかれる。


「三分！？無理だろそれ！」

「大丈夫だよ！ほら、もうバス停見えてるし。まあ、後ろから迫って来るバスも見えてるけど」


それは、全然大丈夫ではない。なにせ、バス停は確かに見えているけれど、ただ見えているだけで別にすぐそこというわけではない。
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