兄弟ものがたり
「ほらっ、急いでかずくん。遅れちゃう!ていうか、終わっちゃう!」

「も、元はと言えば、おまえが突然、弁当なんか作り始めるからこうなったんだろ!」


三段重ねの豪華な重箱が包まれた風呂敷包みを抱えて、和人は息を切らせていた。


「だって、時間的にお昼は絶対必要でしょ?」


お手拭きやら箸やらの細々としたものが入ったトートバッグを手に前を走る真悠は、足取りも軽く息も上がっていない。


「だからって……何で、俺が、あいつの弁当持って、全力疾走しなきゃいけないんだよ!!つーか、もっと普通の弁当箱に詰めろよ!」

「小さいお弁当箱が何個もあるより、一個の大きいやつに詰めた方がいいかなって思ったから。それに、かずくんの分だってちゃんと入ってるんだから、文句言わずに走れ!」


なるべく重箱を揺らさないように注意を払いながら走るのは、普通に走るよりも疲れる。
それに、抱えているせいで両腕が塞がって振れないので、いまいちスピードが出せない。


「あの野郎……これで最下位なんて不甲斐ない結果だったらただじゃおかねえ」


ぶつぶつ文句を言いながらも、和人は必死で真悠の背を追いかける。

思い起こせば昔からいつだって、先を歩くのは年下の真悠の方で、陽仁と和人はその後ろをついて歩いていた。
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