兄弟ものがたり
よちよちと近所の公園に行く時も、ランドセルを背負って登校する時も、たまに帰りが三人一緒になった中学生の時も――。

いくつになっても、その構図は変わらないままなんだなと思ったら、何だか可笑しかった。


「ちょっとかずくん!ニヤニヤしながら後ろ走らないでよ。不審者だと思われるでしょ」

「誰が不審者だ!お前こそ黙って走れ、舌噛むぞ」


ギャーギャーと喚きながら走っていると、遠くの方から微かに歓声が聞こえてきて、陽仁が通う大学が見えてきた。


「ああー、やっぱりもう始まってる」


ここに来て更にスピードを上げた真悠に、和人は必死で食らいつくも、抱えた風呂敷包みが邪魔をして上手くスピードに乗れない。


「おい、真悠……!」


段々と離れていく背中に向かって叫ぶと、真悠は足を止めることなく顔だけで振り返った。


「向こうで待ってるから、あとでゆっくり来てもいいよー!お弁当、絶対揺らさないでねー」


大きく手を振る真悠の姿が、門を曲がったところで見えなくなる。


「あんの薄情者……」


一人取り残されたところで一度足を止めた和人は、そこで呼吸を整えると、重箱を抱え直してまた走り出した。




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