Be!渋谷店の事件簿
五十嵐と同時に振り返ると、柱の陰に影が隠れたのが一瞬見えた。

静かな駐車場。
そいつも私たちも息を殺している。

「誰だ」
五十嵐が呼ぶと、

「俺だ」
そこから出てきたのは、警備の真田部長。

「真田部長?こんなところで何してるんですか?」

銀髪、銀縁眼鏡の真田部長がポケットに手を入れたまま近付いてくる。

「おまえ達こそこんなとこで何やってるんだ?って野暮なこと聞いたな」
ニヤリと笑う真田部長。

「野暮な訳ないじゃないですか。私たちは巡回に……」
「なんで隠れたりするんですか」

私と五十嵐と同時に口を開いた。

真田部長は五十嵐を一瞥すると、
「そりゃおまえ。俺が見てたらできるもんもできねぇだろ」
意味深に笑う。

「だから気配消して近付いたんですか?」
五十嵐のその聞き方が何かを言いたげで、思わずそっちを見た。

「おまえ達こそここで何してる?」
真田部長も目が笑っていない。

どういうこと?
この扉の向こうには何かあるの?
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