Be!渋谷店の事件簿
「もう!帰ろ!」
わざと大声出して鼻歌なんか歌ってみたりして片付けていた。
時計は21時を過ぎてる。
一人きりのオフィスは怖すぎる。
怖すぎて大事なことも途中で考えられなくなるくらい。
「あー。今日も疲れたー。お疲れ様、私。帰りはご褒美解禁!!」
大声出しながら無駄にテキパキ動いてみる。
「はぁ……」
このまま五十嵐は本社で出世していくんだろうか。
あの頃はなんでも一緒だったのに。
随分差をつけられた。
各店所属の社員じゃなく、全ての店舗をまとめる本社にいることも、同期の間じゃ一番の出世頭。
そしてあんな素敵な年上の彼女もいて、更には常務にまで気に入られて……
「帰ろう。さっさとっ……」
何今の。
視線を感じた。
ドアのところに誰かがいる。
ガラス戸の向こうに確かに人影が動いたのに、
「誰かいるの?」
静まり返ったオフィス。
動く気配すらない。
潜んでいる。
もしくは人じゃないとか……
ガタリと大きな音を立てて立ち上がり、ドアに向かって行った。
だって怖いじゃん。
このまま黙っておくなんて、何が出てもいいから正体を突き止めないと!
いや、何にも出てほしくないけど!
無駄に足音を立てて近づいて行ったのは、もしそこにいらっしゃるなら消えててほしいからで、
ドアノブに手をかけて唾を飲み込む。
グッと力を入れて手前に引いてみた。
誰もいない。
ドクンドクンとうるさい心臓の音に余計に緊張しながらそっと首を伸ばすと、
「よぉ」
「ヒーーー!」
近くから男の声が
「俺だよ」
「ヤメテーーー!」
もう目を開けていられない。
「ゆず!」
「イヤーー…え…?」
聞き覚えがある声。
「バカ。声でけーよ」
恐る恐る声のする方を見ると
「あ……そ、奏…」
わざと大声出して鼻歌なんか歌ってみたりして片付けていた。
時計は21時を過ぎてる。
一人きりのオフィスは怖すぎる。
怖すぎて大事なことも途中で考えられなくなるくらい。
「あー。今日も疲れたー。お疲れ様、私。帰りはご褒美解禁!!」
大声出しながら無駄にテキパキ動いてみる。
「はぁ……」
このまま五十嵐は本社で出世していくんだろうか。
あの頃はなんでも一緒だったのに。
随分差をつけられた。
各店所属の社員じゃなく、全ての店舗をまとめる本社にいることも、同期の間じゃ一番の出世頭。
そしてあんな素敵な年上の彼女もいて、更には常務にまで気に入られて……
「帰ろう。さっさとっ……」
何今の。
視線を感じた。
ドアのところに誰かがいる。
ガラス戸の向こうに確かに人影が動いたのに、
「誰かいるの?」
静まり返ったオフィス。
動く気配すらない。
潜んでいる。
もしくは人じゃないとか……
ガタリと大きな音を立てて立ち上がり、ドアに向かって行った。
だって怖いじゃん。
このまま黙っておくなんて、何が出てもいいから正体を突き止めないと!
いや、何にも出てほしくないけど!
無駄に足音を立てて近づいて行ったのは、もしそこにいらっしゃるなら消えててほしいからで、
ドアノブに手をかけて唾を飲み込む。
グッと力を入れて手前に引いてみた。
誰もいない。
ドクンドクンとうるさい心臓の音に余計に緊張しながらそっと首を伸ばすと、
「よぉ」
「ヒーーー!」
近くから男の声が
「俺だよ」
「ヤメテーーー!」
もう目を開けていられない。
「ゆず!」
「イヤーー…え…?」
聞き覚えがある声。
「バカ。声でけーよ」
恐る恐る声のする方を見ると
「あ……そ、奏…」