Be!渋谷店の事件簿
「奏が突然声出すから……」
ようやく笑いの波が去ったのか、一瞬私に視線を寄こした五十嵐はゆっくりとオフィスを見渡した。
「怖いくせに無理して残業するからだろ」
「怖くないし」
「へー。じゃあ、もうお化け屋敷一人で入れるんだ」
ドヤ顔で見てくる五十嵐はちょっとムカツク。
「あんなとこお金払って入る意味が分かんない」
「変わってねーなー。今でもまだ夜暗いと眠れないんだろ?」
嬉しそうに言う五十嵐が、昔の笑顔と重なって見える。
「おまえ、まだあれ持ってんの?」
「なにを?」
「茶色のでっかいクマ」
「あー。あれね」
「あれがないと眠れないんだろ?なんだっけなー。そう!くーたん!」
五十嵐はまたゲラゲラと笑い始めた。
ご機嫌だな。
「よく覚えてるね」
「まさか東京までは持ってきてねーだろ」
「え?はは……」
笑顔が引き攣る。
「は?まじ?持って来てんの?くーたん?」
「気安く呼ばないでよ」
「寂しー奴。まだくーたんと寝てんの?」
「もう寝てません!」
「ふーん。いつから?」
「え?」
「いつからくーたんと寝るのやめたんだよ」
突然真顔で見てくる五十嵐の目が、私を責めているみたいに感じる。
それは五十嵐の知らない私の時間を責めているみたいで、あの日 離れていった私を責めているみたいで……
ようやく笑いの波が去ったのか、一瞬私に視線を寄こした五十嵐はゆっくりとオフィスを見渡した。
「怖いくせに無理して残業するからだろ」
「怖くないし」
「へー。じゃあ、もうお化け屋敷一人で入れるんだ」
ドヤ顔で見てくる五十嵐はちょっとムカツク。
「あんなとこお金払って入る意味が分かんない」
「変わってねーなー。今でもまだ夜暗いと眠れないんだろ?」
嬉しそうに言う五十嵐が、昔の笑顔と重なって見える。
「おまえ、まだあれ持ってんの?」
「なにを?」
「茶色のでっかいクマ」
「あー。あれね」
「あれがないと眠れないんだろ?なんだっけなー。そう!くーたん!」
五十嵐はまたゲラゲラと笑い始めた。
ご機嫌だな。
「よく覚えてるね」
「まさか東京までは持ってきてねーだろ」
「え?はは……」
笑顔が引き攣る。
「は?まじ?持って来てんの?くーたん?」
「気安く呼ばないでよ」
「寂しー奴。まだくーたんと寝てんの?」
「もう寝てません!」
「ふーん。いつから?」
「え?」
「いつからくーたんと寝るのやめたんだよ」
突然真顔で見てくる五十嵐の目が、私を責めているみたいに感じる。
それは五十嵐の知らない私の時間を責めているみたいで、あの日 離れていった私を責めているみたいで……