Be!渋谷店の事件簿
五十嵐 奏(いがらし そう)
本社、イベント企画部のマネージャー。
渋谷店や広島店みたいな各店舗をまとめる本社所属で、Be!の若手幹部候補。
高い身長と、さっぱりした顔立ちのおかげか、その名前はBe!の他の店舗でも聞かれるくらい。
イケメンマネージャーって
そりゃ、見た目はいいかもしれないけどさ。
ぞくりとする声なんだろうけどもさ、でも……
「おはようございます。ギリギリ間に合いました」
噂をすれば。
長い脚であっという間に玄関のスタッフの列に紛れ込んだ五十嵐奏。
ほら、もう美鈴さんが喜んでる。
「いらっしゃると思ってましたよ。五十嵐マネージャー。あら、ネクタイが少し……」
「ありがとう美鈴さん。気が利く女性は素敵ですね」
爽やかな微笑みで、歯の浮くようなセリフも平気で言っちゃう辺りが、私は受け付けない。
首がいーって痒くなりそう。
「おや?隣の人はどうしたんですか?朝から変顔の練習ですか?」
イヤミな言葉もイケメンが言うと
「やだー。五十嵐マネージャーったらぁ」
とても面白い言葉に聞こえるらしい。
はぁ、ついてけない
しかもその言葉を言った後 得意気な顔してこっちを見てるっていうのも引いてしまうポイントで
「朝から変な物を見たからでしょうね」
営業スマイルも忘れて出た本心なのに、聞こえないフリして美鈴さんと微笑みあっている。
本当にムカツク男
だけど、この五十嵐奏と私は、同じ故郷、同じ道場で、
小さい頃を一緒に過ごした仲間……だった。
過去形ね!
「高田さん。いつまでしゃべってるの!」
ほら蓮見チーフに怒られてる。
対する五十嵐は笑顔で謝ってて……
その笑顔で何人の女がこの男を許してきたんだろう。
「本日はBe!渋谷店にお越しいただきありがとうございます。ただいま10時……」
蓮見チーフの録音した美しい声が開店を告げると、開かれた自動ドア。
お客様が入っていらっしゃる度に、
「いらっしゃいませ」
全員で頭を下げる。
入ってくるお客様のほとんどは五十嵐を見て何かしらの反応を示してる。
見つめたり、笑顔になったり、頬を染めたり……
この男、そんな自分に対する周りの反応を理解してるんだろうな。
見たこともない優しい目で微笑みを返している。
ただ私には、絶対にその顔を向けてはくれないんだ。
本社、イベント企画部のマネージャー。
渋谷店や広島店みたいな各店舗をまとめる本社所属で、Be!の若手幹部候補。
高い身長と、さっぱりした顔立ちのおかげか、その名前はBe!の他の店舗でも聞かれるくらい。
イケメンマネージャーって
そりゃ、見た目はいいかもしれないけどさ。
ぞくりとする声なんだろうけどもさ、でも……
「おはようございます。ギリギリ間に合いました」
噂をすれば。
長い脚であっという間に玄関のスタッフの列に紛れ込んだ五十嵐奏。
ほら、もう美鈴さんが喜んでる。
「いらっしゃると思ってましたよ。五十嵐マネージャー。あら、ネクタイが少し……」
「ありがとう美鈴さん。気が利く女性は素敵ですね」
爽やかな微笑みで、歯の浮くようなセリフも平気で言っちゃう辺りが、私は受け付けない。
首がいーって痒くなりそう。
「おや?隣の人はどうしたんですか?朝から変顔の練習ですか?」
イヤミな言葉もイケメンが言うと
「やだー。五十嵐マネージャーったらぁ」
とても面白い言葉に聞こえるらしい。
はぁ、ついてけない
しかもその言葉を言った後 得意気な顔してこっちを見てるっていうのも引いてしまうポイントで
「朝から変な物を見たからでしょうね」
営業スマイルも忘れて出た本心なのに、聞こえないフリして美鈴さんと微笑みあっている。
本当にムカツク男
だけど、この五十嵐奏と私は、同じ故郷、同じ道場で、
小さい頃を一緒に過ごした仲間……だった。
過去形ね!
「高田さん。いつまでしゃべってるの!」
ほら蓮見チーフに怒られてる。
対する五十嵐は笑顔で謝ってて……
その笑顔で何人の女がこの男を許してきたんだろう。
「本日はBe!渋谷店にお越しいただきありがとうございます。ただいま10時……」
蓮見チーフの録音した美しい声が開店を告げると、開かれた自動ドア。
お客様が入っていらっしゃる度に、
「いらっしゃいませ」
全員で頭を下げる。
入ってくるお客様のほとんどは五十嵐を見て何かしらの反応を示してる。
見つめたり、笑顔になったり、頬を染めたり……
この男、そんな自分に対する周りの反応を理解してるんだろうな。
見たこともない優しい目で微笑みを返している。
ただ私には、絶対にその顔を向けてはくれないんだ。