Be!渋谷店の事件簿
当然、渋谷店の方でも全てが機能してなくて、みんな不安な顔。
総合受付の人たちは誰も正面玄関にいなくて、受付が空いたまま。
ガラス戸の向こうには連休中日でお客様が10時になるのを待っている。

足が竦む。
みんなが大変な時こそ頑張らないとって思うのに、正面玄関に近づけない。

「そんなとこに突っ立ってないでよ!」

厳しい声に振り向くと、ムーンジュエリーのマリーさん。

「ごめんなさい」
「みんなが動揺するのは分かるけど、今はお客様第一で考えて」
「……」
「あなたがそんな顔してたら、私たちだって不安になるでしょ!」

周りを見れば、みんな不安そうな顔でこっちを見てる。

「みなさん……」
「笑顔が出ないなら、受付の子たちのフォローに回って。ここは私たちに任せて」

テナントの皆さんがゆっくり近づいてくる。

「そうだ。俺たちに任せて」

B館のメンズ用品Jeeの榎本店長も来てた。

「ありがとうございます」

正面玄関にならんでいるのは、テナントのスタッフの人たち。
A館だけじゃなくB館からも来てくれてる。

受付には渋谷店営業部の原さんが入った。
私とすれ違いに本社の人たちも応援に来て、テナントの人たちに事情を説明しだした。

「一回 忘れましょ!営業終わったらその話もう一度聞かせて!」

1階を去る直前、マリーさんの声がした。
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