Be!渋谷店の事件簿
今はこんな私たちでも、小学生の頃は仲が良かった。
親友、いや戦友ってくらい私は誰よりも五十嵐奏を頼っていた。

試合会場でも奏がいないと不安だった。
奏が良い試合をすると自分のことのように嬉しかった。

同じ歳の私たちは比べられることも多かったけど、
唯一無二の戦友だし、最高のライバルだった。

あの日、何も言わずに裏切ったのは私だけど……


数年後、Be!の入社式でスーツ姿の五十嵐奏を見た時は、固まった。
驚き過ぎて、現実か夢の中か本気で分からなくなったくらい。五十嵐も驚いた顔をしてたから、私が合格してるのを知らなかったんだと思う。

でも今から思うと私がBe!に就職したいな。って思ったのは母の影響が大きかった。
たぶん仲の良い五十嵐のお母さんと母とでそうなるように仕向けられてた気がしないでもない。

その後私は広島店に配属になり、五十嵐は池袋店に配属になった。

それから2年、たいして話もしないまま、本社勤務になってた五十嵐と、本社そばにある渋谷店に配属になった私とで久しぶりに話したのが昨日のこと。

どれくらいぶりだったんだろう。

中学に入る時からだから……もう12年になるのか。

私より弱かった五十嵐が、今やBe!の看板マネージャーになってるなんて、あの頃は想像すらできなかった。
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