Be!渋谷店の事件簿
「……」
「……」

何か言われると思って身構えてたら、何も言われなくて、ただよっちゃんは壁にもたれて腕を組んでいる。

食堂の中からは「五十嵐マネージャーってそんな人だったんだ」とか「常務も欲しいものは必ず手に入れたい人だもんね」という声が聞えている。

「蓮見さん。本当に自殺したと思ってる?」
おもむろに話始めたよっちゃん。

「違うんですか?」
「私にはどうしても蓮見さんが自ら死を選ぶなんて考えられない」

ため息をついたよっちゃんは食堂の中を見つめている。

「私も信じられないですが、好きになっちゃいけない人を好きになったとか、どうとか……」
「それが五十嵐マネージャーだって言うの?」
「そういう噂が……」
「そんなことあるはずないじゃない。五十嵐マネージャーは知らないけど、少なくとも蓮見チーフの好きな人は五十嵐マネージャーじゃないし」

え?どういう事?
二人は付き合ってたんじゃないの?
よっちゃんも五十嵐を好きだったんじゃないの?

「その顔はあなたも噂を信じてたって顔ね」
目を細めたよっちゃん。

「蓮見チーフの好きな人は五十嵐マネージャーじゃないから」
「じゃ、誰なんですか?」
「そんなの私が知る訳ないでしょ?」

へ?

「蓮見さんは、五十嵐マネージャーとは何の関係もなかったと思う」

五十嵐と蓮見チーフは付き合ってると思ってた。
いや、たぶん皆そう思ってる。
三角関係に悩んで自殺したって。

よっちゃんは五十嵐のことが好きだから、認めたくないだけなのかもしれない。
だけどそんな雰囲気でもなかった。

あー、もうどうなってるんだか!
こういう時は本人に直接確認するのが一番なんだろうけど、五十嵐ーなんで出てこないんだ!
< 60 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop