Be!渋谷店の事件簿
B館の見回りを終えて、A館の地下フロアに戻ると、

「百瀬」

不意に低い声で名前を呼ばれた。
聞き取れないくらいの小さい声なのに、なぜか聞こえる不思議な声。

振り向くと、地下の防災センターから顔を出してる真田部長。
銀縁眼鏡を鼻に乗せて、銀髪の短髪でするどい眼光の真田部長は、Be!渋谷店の防犯・防災の全ての責任者。

同じ武道家のような気がするけど、この何事にも動じない雰囲気は、元刑事だからかも。

「お疲れ様です」

真田部長は私の声を聞くと、軽く肯いたあと、防災センターを親指でさしてアゴで来いと言っている。

防災センターには、いろんな機械が置いてあって、監視モニターもここにある。
その奥が警備隊の休憩室で、防災センターにはいつも警備の人がいる。

「おじゃまします」

昨日も一昨日も挨拶に来たら、寄っていけと言われて、休憩室で緑茶を振る舞ってくれた。
たぶん私が異動してきたばかりだから、気を遣ってくれてるんだろうと思う。

真田部長の後について、防災センターの奥の休憩室に行ってみると、

「げっ」
「はっ?」

五十嵐奏がイヤそうな顔してこっちを見てる。
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