浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
優の部屋に上がり扉をひとつあけるとすぐ左手にキッチンがある。
この向こうでの話し合いはちゃんと成されているだろうか……。
立ち止まってぼんやりそちらを見ていたら
「気になる?そりゃそうか……」
と優は私を通りすぎて冷蔵庫からミネラルウォーターを出してきてくれ、『はい』と渡す。
「ありがと…………」
私は水のペットボトルを開けることもせず、両手で持った。
「私……万里子さんに何も説明してないんだけど……」
水を美味しそうに飲んで、満足げにソファに座った優を、目で追っていた。
「……いいんだよ。万里子さんは大概意地っ張りなんだから、ちゃんと木嶋さんと向かい合って話さないと。横からヤイノヤイノ言ったってダメなんだよ。」
と私を隣に手招きした。
「え?ちょっと待って?だったら私ここまで来なくても良かったんじゃない?」
「ん?……まぁ……。保険だよ、ホケン。木嶋さんでダメだったら透子に登場してもらうよ。」
「そう……なの?ま、いいけど。でもそんなにゆっくりできないんだよね。」
「え?まさか今日帰るつもり?」
「当たり前だよ!そんなに休めないもん!」
「風邪引いたことに」「しません」
優はソファの背もたれに体重をかけながら溜め息をついた。
「せっかく来たのに。」
「遊びに来た訳じゃないの。あ~隣はどうなってるんだろう……木嶋さんにフォローもしてないし、あの時の事もちゃんと説明したい~」
ウロウロしながら台所を透視するかのように睨んでいる私を見て、微笑んでいる余裕の優。
「ま、取り合えず落ち着いてコーヒーでも……いやちょっと早いけど晩飯にするか。ピザでも取ろう、隣の分もね。」
そう言って電話をポケットから取り出した。