浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

「かんぱ~い!」
「ようこそ!三池さん!お久しぶり、透子ちゃん!」

喉の乾きを癒すようにビールを煽った。

「良い飲みっぷり!」
「だなぁ~気持ちいいよ、お前の飲みっぷり!」

ママと三池さんが口々に誉めてくれる。飲みっぷりだけど……。

「ほんと、お前がいなくなると面白くなくなるわぁ~」
「あら?透子ちゃんどこへ行くの?」
「いやね、こいつ、いま退職待ちでねぇ。」
「退職するの?あ、結婚?」
「そうそう。そうなんですよ。でね……」
「ちょっと待って……あら、お帰り?ありがとうございます。」
私が一言も喋らせてもらえないまま会計の為に席を立ったママの代わりに、ゆかりさんがこちらへ近づいてきたからドキッとした。

「失礼します」
「あ、美人さん~!」
ママとは違い若いゆかりさんが横に座ると、三池さんは心なしかテンションアップ。
若いといっても30オーバーだけど、ゆかりさんは華やかにしているからか、若く見える。子供がいるようには見えないもんね。

私がゆかりさんの動きをじっと見てると、ゆかりさんの手が私の方へやってきて少し驚いた。

「おかわり……何にする?」
「へっ?……あ、あぁっと……どうしよう……かな」
「なんでも……一杯驕らせて。」
「……え?」

見るとゆかりさんは瞼を臥せていた。
そうしてから三池さんの方に視線を向けて

「よかったらそちらの方も」
「え?俺も?いいんですか~?」
「…………ちょっ!ダメですよ!」
「え?なんでだよ?」
「だって……」

ゆかりさんが働いてるのは誠ちゃんとの生活の為。
少しでも誠ちゃんの為に使わないといけないし、そうしてほしい。
お金じゃないけど、今も一人ぼっちで待ってる誠ちゃんに……。

「三池さんが奢ってください。」
キッパリと言い放った。

「お前なぁ……まぁいいか。じゃあお近づきにボトル入れちゃおうかなぁ。……一番安いので……」
「ショボいですね……」
「だったら飲むなよ。俺はここに来るまで結構飲んでるんだから、金ねーんだよ!」

「店紹介しろ」と言っておいて、「金がない」なんて。

紹介した私の顔に泥を塗るつもりだろうか。
まぁ……優のボトルをチビチビ飲んでた私が突っ込めるところではないが。

ゆかりさんは戸惑っていたけれど、ボトルを入れてくれると言う三池さんにお礼を言って、用意をしにカウンターへ戻っていった。

「あ、そうそう。応募あったぞ。一件。」
< 112 / 130 >

この作品をシェア

pagetop