浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
そうして1ヶ月待つことなく送別会アンド歓迎会が行われる。
ただの事務員の交代なのに、全員が集まってくれて本当に有難い。
というのも、この会社はほとんど従業員の出入りがなく、そう考えると優良企業だ。
早まったかなぁ……と思った矢先、
「いやぁ、これで安心だよ。君の退職を毎日のように急かされていて……これで連絡来ないと思うと。」
あからさまにホッとした様子の社長を見て、「仕方ないな」と思った。さらには
「ほんとほんと~。募集の進捗状況を毎週確認されてたよ、俺も。ほんと、仕事がひとつ減った~」
三池さんも嬉しそう。
これが私の結婚を祝う言葉でないから腹が立つ。
優はこの二人に、疲れるぐらいの追い込みをかけてたんだ。
もう……私の会社に……なに考えてんの、優!
口を尖らせていると、居酒屋の宴会場の襖をバンッと開いた。
「透子ちゃん!」
誠ちゃんが満面の笑みで飛び込んできた。
「誠ちゃん!久しぶり~!」
私たちはガシッと抱き合った。
「誠一!ご挨拶しなさい!」
ゆかりさんにたしなめられ、誠ちゃんは私から離れると
社長始め一同に
「はじめまして。市原誠一です。」
と、ペコッと頭を下げた。
すると、皆が
「おぉ~賢い!」「小さいのに偉いね~」「しっかりしてる~」と称賛の声をあげた。
ゆかりさんは恐縮し、誠ちゃんは照れ臭そうにはにかんでいた。
あ~私、ほんとに良いことしたんじゃない?
二人を見てほのぼのとした気持ちになった。
ゆかりさんに付いて社長と喋っていた誠ちゃんが、しばらくするとミキちゃんや三池さんと座っていた私の隣に来てちょこんと座った。