浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
優はしばらく私を見つめていたが、スクッと立ち上がり
私の手を繋ぎ足早に歩き出した。
「す、すぐ、るっ、……ごめんね!」
手を引く力が強く、
強引ちょっと怒ったように黙った優は、ただ歩いた。
足の短い私はもちろん早歩きなんだけど。
「…………たな。」
「……え?」
私の方を振り返り、
「また先に延びた。透子と住むの。」
ジトーッっと恨めしそうに見て、また歩き出した。今度はゆっくりと。
「……ごめん。……でも私のせいじゃない気がするんだけど……。」
「透子のせいじゃないけど、なんで先輩とも知り合いになってんの。両方と仲良くなけりゃ、遠い昔の幼馴染みに二次会頼まないだろ。ほんと、誰とでも仲良くなれるんだな。凄い才能。」
チクチクと嫌みを言われ続けた帰り道。
でも繋いだ手の温かさから愛情が溢れるくらい感じられて、心に火が灯ったようだった。
「お邪魔します」
きちんと挨拶して靴を揃えた優。
「どーぞ」
「あーぁ。早く『ただいま』って言いたいなぁ。」
背中を向けたまま呟く。
「……しつこいなぁ。もう……」
「今更知ったの?」
「………………いえ」
いつも最後は軽く流してくれる。
きっとゆかりさんの再就職の件も、幸代さんの結婚の件も、優の中で昇華しているんだろう。
それくらい、懐が深い人なんだ。本来は。
飲み足りないわけではなかったが、冷えた白ワインを出してきた。
「優、飲もう。一本だけ。」
ニヤリと笑い、ネクタイを緩めたその姿は私が好きな優の一つ。
「いーね。シャワーは?」
「あとで」「じゃ、俺も」
私も着替えずに座った。