浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「まさか……透子。逃げるつもり?」
ギクッとしたが、顔や態度には出ていないはず。
「いやいや。そんなわけないでしょ。」
「だよね。言っとくけど俺は親の言いなりにならないからね。だから安心してお嫁に来てよ。」
がっつりと抱え込まれた。
「まぁ……不安はあるけど……。仕方ないね。」
「……?仕方ない……?」
怪訝な顔をした優の背中にゆっくり腕を回した。
「だって、絡めとられちゃってほどけないんだもん。優が。」
言ってから恥ずかしくなり、照れ隠しにアハハと色気なく笑ってしまった。
「とう、こ」
だけどもこの少女漫画的な台詞は優のハートを射止めたようだった。
こっちまで蕩けそうな表情をして軽く伏せた瞼が近付くと、唇が吸い寄せられる。
すると、またもや今度は私の携帯が嫌な着信音を鳴らす。
五センチも離れていないであろう私たちは目を見合せ固まる。それでも優は負けじと軽くキスをして、それから離れた。
「……電話……出て。それからは電源落とそう……」
ため息混じりに。
私もため息をつきたいのを抑えて、テーブルの上に置きっぱなしの携帯を掴んだ。
「誰?」
「あ……お母さんだ。……もしもし?」
『透子?あんた、優くんとどうなってるの?あれから連絡もしないで……。お父さんが優くんと飲みたいって言ってるんだけど……』
「あー……」
「お義母さん、なんて?」
『優くん!いるの?変わって!今すぐ変わって!』
「いや、お母さん……そのうち。そのうちね!お父さんに言っといて。」
『カズくんが結婚するって聞いたのに、あんたは何モタモタしてんの?早くしないと逃げられちゃうわよ!』
受話器を押さえて優に苦笑いした。
「早く結婚しないと逃げられちゃうんだって、私。」