浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「嫌いじゃないよ。好きだよ。」
そう言うとパアッと明るくなった表情。
そんな誠ちゃんは紛れもなく幼児の顔をしてた。
「ママの事が好きな人は、俺も好き。」
そう言う誠ちゃんは私をようやく認めたようだ。
この正直で生意気でママを守ろうとするかわいい男の子が、わたしの母性本能を刺激した。
「保育園の友達はママの事、嫌いなんだ。」
「…………へ?」
突然何を言い出すかと思ったら、保育園で揉め事があったようだ。
なるほど。子供を一人置いて夜の仕事に行く母親は世間では当たりがキツイだろうと察する。
しかも、こんなことママには言えないから結局は子供が苦しむことになる。
「あいつら、ママがイヤらしい仕事してるって言うんだ!…………おばさん、ママそんなことしてないよね?」
「してないよ。私だって行ってるんだもん。」
「ねっ!だよねっ!……よかったぁ」
心の底から喜んでいるこの小さな男の子は、たった一人で敵と戦ってるんだ。ママと言うお姫様を守って。
「月曜日、皆に言ってやんなよ。『ママはいかがわしい仕事なんかしてない。僕を守るために頑張ってくれてるんだ!』って。」
「『いかがわしい』って何?」
しまった……好奇心だらけの子供に説明しにくい事をわざわざ言ってしまった……。
「えっとー……とにかく、それで元気がなかったの?体調は悪くないのね?」
「うん、大丈夫。あ、安心したらお腹減っちゃった。晩御飯食べようかな……」
「え?まだだったの?」
すでに時刻は8時。
「うん。お腹減らなくて。」
小さな子が食べれなくなる程に心を痛めているなんて切ない。
そして、「食べよう~」と冷蔵庫から出してきたのはコンビニ弁当。
ガサガサとビニールを剥がしている。
「……これ?誠ちゃんの晩御飯……」
「そうだよ。これ、美味しいよ。……あ……食べる?」
しかも、私に気を使ってなけなしの晩御飯を『くれる』と言う。
……もうなんと言うか……週末ゴールデンタイムのテレビ番組なら、お涙頂戴ってな場面ですよ。
「いいよ。食べて食べて。私は食べてきたからお腹一杯。」
と言うと、喜んで食べ始めた。
コンビニ弁当を。嬉しそうに。
ゆかりさん…これでいいんですか?
切にそう思った。