浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

『大丈夫でしたよ。誠ちゃん、御飯も食べて元気でした!今お風呂に入ってもらってます。』

忙しいゆかりさんに簡単なメールを送った後、私は冷蔵庫チェックすることにした。

「すいません。シツレイします……」

そっと開けたとて同じなんだけど、他人の家の冷蔵庫を開けるのはやっぱり気が引ける。

少しだけ開けたその中には、ごちゃごちゃとたくさん入っていた。
ジュースに惣菜のパックがほとんど。
ただ、野菜なんかも少しある。玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモ、大根。
根菜も冷蔵庫に入れちゃったかとは思ったけど。

そっか。ゆかりさん、料理を全くしない訳ではないんだな。
今日はたまたまなのかな。

そこに突然鳴り出した私の携帯。
勝手に人様の家の冷蔵庫を開けた私を責めてるようで、慌てて冷蔵庫を閉めた。
ドキドキしてる心臓を押さえて鞄の中の携帯を漁る。

「はいっ!」
『どうしたの?慌てて……』
なんと相手は優だった。


「す、すぐっるっ!」
『今、……実家?』
「えぇ?……あ、そうそう!」
今日は実家の方に来てるって言ってあったんだった。


そこになんともタイミングが悪いことに、
「あがったよ~」
と気持ち良さそうに誠ちゃんは全裸で出てきた。

慌てている上に、思わぬ男(幼児)の裸体を目の当たりにして私はパニックになる!

「ちょっ!服!服着て!」

携帯を持ちながら誠ちゃんにタオルを持ってくる。
そしてパジャマを着始めた誠ちゃんを横目に、改めて携帯を耳に当てた。

「ごめんね、優……」
『誰?誰かいるの?』

しまったぁ……慌てすぎてこっちのフォローができてなかった!

「お、お父さん!裸でお風呂から出てきて……困ったもんだよねぇ~」
アッハッハと笑う。

『…………お父さんか……』

いけた?誤魔化せた?
ゆかりさんの家にいる理由を、今誠ちゃんの前で優に説明するのは難しい。
内心ホッとしていると、

『ちょうど良かった。ちょっと代わってくれる?』

オーッ!ノゥッッッ! 

「な、なんで!?」
『聞きたいことあって。』
「あの、もう寝室行っちゃったし……っ」
『まだ起きてるでしょ、早く。』
「いや、また今度にしようよ。今日はお父さんも疲れてるみたいだしっ!」
 
私の身ぶり手振りで取り繕う私を、誠ちゃんは怪訝な顔でじっと見ている。

『…………透子。実家じゃないよね?どこ?』

万事休す。

「どこって……」
『なんで嘘つくの。誰といるの?』
「あの……」
『嘘つく理由はなに?』
「…………」

なんと説明していいものやら、言葉に詰まってしまった。

『…………わかった。もう、いい。』

そう言って電話は切れてしまった。

< 15 / 130 >

この作品をシェア

pagetop