浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
会話始めの『もしもし』ってのも無く、優の台詞はこれ。
『……で?』
一文字の尋問に、焦る。
落ち着け!落ち着け私!
ここで焦って適当なことを言うと余計にややこしくなるぞ。
『すぐ答えないってことは「そういう事」って認識でいいの?』
浮気疑惑決定!?
そう決めつけるのは早すぎるんじゃないかと思ったけれど、取り合えずそれは置いといて、できる返答からしていこう!
「いや!あのね!実は……
そのぅ、知り合いの子供の面倒をみていて……ですね。
昨夜はそこにいたの。」
『実家には居なかったと……』
「そうなの……その子の家にいたの。」
『…………聞きたいことはいっぱいあるけど、そんなことならなんで嘘ついた?』
実は、ゆかりさんの子供なんです。
そう言っても差し支えないだろうか。
それとも、やっぱり不快な思いを与えるだろうか。
「その子がね、いろんな問題を抱えていて、でもその事を他の人に知られたく無さそうだったから……」
『ふぅーん。ずいぶん仲良しなんだね、その子と。お風呂も入れちゃってたりして?』
「あ、まぁ……。」
『それで、その子が問題抱えてるのにその子の母親は?なんで土曜日のそんな時間に居ないの。』
「あ、サービス業だから……って!」
『……なるほどね』
しばらくの沈黙。
大きな波は乗りきった?……のかな?
『来週は来れる?』
「あ、……うん。行くよ。」
『そっか。長いこと会えなくて寂しいけど……楽しみにしてる。』
「……それより、優はちゃんと……」
『あ、ごめん。ちょっと待って。…………はい。』
?誰か側にいるの?
『あぁ……こことはまだですね……。このプレゼン、うん。大丈夫です。あ、すいません。旨そう。いただきます。』
なに?仕事?日曜の昼に?
『あ、ごめん、透子?』
なんだか体温がスッと下がる。
「……仕事してるの?」
私が何のために今週行かなかったと思ってるんだ。
優に休んでほしいから。
ちゃんと御飯食べてほしいから。
なのに、優は仕事してる。
多分社長であろう美女が用意した昼御飯を食べて。
思いやったつもりが完全な空回り。
先週の腐った惣菜たちと共に、私の良心を攻撃してくる。
「そう。日曜も仕事してるんだ。そうだよね。忙しいもんね。」
私の作った料理も食べる暇がないくらい。
仕事を頑張っている男の人に言うべき事じゃない。
飲み込むんだ。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
ダメーーーーー
「来週も……止めとくね。」
完全にひん曲がった私の心。
もう、止められなかった。