浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

そんなに意見を持たない私は、結局優の言いなり。

土曜日だというのにこんなに遅い時間に帰ってきて、それから結婚式やその後の話を延々と進める彼を見て、コーヒーを啜っていた。

「明日、やっぱり帰っちゃうの?」
『帰らないで』と言わんばかりに悲しそうな瞳のワンコ。
何度も言うがアラサーだ。ティーンではない。

「そりゃ仕事あるし。」
「……いつ退職できそう?」
「まぁ募集かけてもらってるから、誰か入ってきて引き継ぎ終わったら。」
「間に合わないよ!」
キィーという叫び声が聞こえそうなほど大声で叫ぶワンコ。
只今、深夜なんですけど。

「ちょっと静かにしなよ。なによ……間に合わないって。何に?」
「結婚式だよ!6月に予定してるのに……」

はい?只今3月中旬。3ヶ月しかないじゃないの!

「ちょっと、なんで6月よ!私まだ優のご両親にも会ってない!しかも式するなら式場も決まってなくて、なんで6月!?せめて秋でしょう!」
「だから!間に合わないよ~全速力で準備しなきゃ!」
「いや、違うでしょ!そっちを遅らせないとダメでしょ!優は仙台、私は東京にいるんだから!」
「遅らせる?ダメ!絶対ダメ!」
「なんでそんなに6月に固執するの!」

食い気味に言うと、彼は雑誌をパタンと閉じて私を見つめた。

「ジューンブライド。6月の花嫁は幸せになれるんだって。透子には幸せになってもらいたいから。」

…………幸せになってもらいたい?

「誰かに幸せにしてもらえって事?」
「まさか!そうじゃなくて!結婚したら……きっと瞳子より俺の方が幸せになれそうだから……負けずに幸せを感じてくれたら嬉しいなぁって……」

な、なんて恥ずかしいことをサラッと言ってのけるんだ!
私は顔が沸騰しそうなくらい熱くなってくるのがわかった。

これが、これが蜜月ってやつですか?!蜜月の威力ですかっっ?!
28年間で初めて私は顔から火がおこせそうです。

「……でもやっぱり6月は無理じゃない?」
落ち着きを取り戻そうと口を開いた。

「えぇー……」
「やっぱり準備はキチンとやりたいし、そんな急いで……準備も結婚の醍醐味だよ。
早くお嫁さんにはなりたいけど、その過程も大事にしたいなぁ。」

まだ20代だし。

「そんな……」
「私、6月の花嫁じゃなくても幸せになる自信あるから!」
「……透子……!」

瞳が潤んできたイケメンワンコ。
悲しいのか嬉しいのか……よくわからない。

「ゆっくり二人で考えたい。二人の大事な結婚式なんだから……」
しばらく考えていた様だけど、優は最後は諦めた模様。

「……うん、わかった。」
悲しかったようだ。

よし!勝った!
なんかコツ掴めてきたぞ!

優に指輪を嵌めてもらったときから、どうも優の思う通りに事が進んできたが、
ここに来てようやく私の意見が通った。

恥ずかしい台詞を絡めながら説得すればいいんだな。


……大体、そんなに急ぐ必要ないでしょ?妊娠してる訳でもないし。私は退職日も決まってない。
確かに今は離れ離れで週末だけ会える遠距離だけど。



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