浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
美女は苦手なんですって
毎日続く携帯の着信履歴を見て、「前にもこんなことあったなぁ」とぼんやり思った。
優の事が信じられなくて、別れ話をした時だった。
優からの電話もメールを無視し続けて。絶対別れてやるって思ってた。
あの時と今では状況が違う。
だって無理にでも会いに来てくれることはない。
電話が繋がらなければ優にはどうにもできない。
来れても土曜日。
それまであと何日あるんだろう。
それまで私はもつのかな。
「で、なんで幸せな人がこんなに飲んでんの?」
カウンターに突っ伏しそうになる私の横に立って、不思議そうに見下ろすスーツ姿の男は、私の幼馴染み。
「……なによ、悪いの?」
「や、別に……って何杯飲んだんだよ。ほぼ、つぶれてるじゃねーか。今日まだ火曜日だぞ。」
「わーかってるわよ。」
明らかにホッとしている店の大将に「ビールください」と頼んでから、カズはとなりに腰かけた。
「あ。もしかして!また浮気されたんじゃねーの?」
「はぁ?……浮気なんかされたことないっつーの。」
「おまえの気を引くためってやつだろ?……そんな女々しい…………まぁいいや。で?」
頼んだビールがカウンターに置かれた。
「あんたになんか聞いてもらおうなんて思ってないわよ!…………ここ、払っといて。」
「え?」
ネクタイを緩めながらジョッキを持った手が止まった。
「お金、足りなくなっちゃったの!」
「えぇっ!俺、呼ばれたの、そんな理由!?コンビニに下ろしにいけばいいだろ!」
「そう……なんだけど、もうちょい飲みたいなぁ、と……一人ならもう飲ませられないって、大将が……酷いでしょ!」
「いや、すこぶる親切な大将だと思うけど。」
大将がカウンターの中から「ですよね……」とウンウン頷いている。
「そっか、カズが来たらまだ飲めるんだ。大将!お代わり!」
「お前!日本酒か!……すいません、薄~いウーロンハイにしてやってください。」
「なんでよ!なんでそんなお茶みたいなの飲まないといけないのよ!」
「ばっか。まだ8時だぞ。今から俺はスタートなのに先に潰れられちゃつまんねぇもん。ゆっくりいけよ。」
カズがあんまり穏やかに言うもんだから、「それもそうか」と納得する。
大将は、お金を払ってくれる……しかも酔っぱらいの私を連れ帰ってくれる人間が現れて、明らかにさっきまでとは違う対応で私達のオーダーを受けてくれた。