浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「おひさ、透子ちゃん!大将、生ビール、大ジョッキで。」
幸代さんはカズとは反対の左側に腰を下ろした。
二人に挟まれる形で身が縮こまる私。
酔いも少々覚めてくる。
カズを呼んだのに、なぜ幸代さん?
ギロッと横目で睨んでやる。この小心者男がっ!
「いやぁ~吉岡くんが退職してから忙しいわ!他の男なんか使い物にならないバカばっかで。」
と、聞きもしないのに愚痴りながらビールを煽る美女。
すべて台無し。
「久しぶりですね。お疲れさまでした……」
「で、元気にしてたの?」
「あ、まぁ……元気ですよ。」
強姦未遂があったことは内緒にしてあったから、極力フツーに。
「吉岡くんは?仙台行った?」
「はい。」
「遠距離に疲れてるとか。」
なんでわかるんだ!
幸代さんの顔をまじまじと見つめた。
「自覚ないかもしれないけど、わかりやすいわよ。」
げ……マジですか?
「幸せいっぱいならいちいちカズを呼び出さないでしょう。」
「…………参りました。」
「うん、よろしい。」
勝ち誇った笑みも美しい。
なんとも不思議な人だ。優んとこの社長に似てるのが嫌だけど。
恋の相談なんかできないと思ってたけど、酔いも助けてか知らず知らずに姉御のような幸代さんに話してたんだ。
カズはそっちのけで。