浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

『透子』

何度聞いても痺れる声。
耳元で囁かれると身も蕩ける、そんなテノール。

『やっと出てくれた。……騒がしいね?家じゃないの?』
聞き惚れているとつい無言になっちゃう。

『……透子?』
「あ、ごめん!そう、そうなの。今は外で飲んでる。」
『……最近、どこかに行くこと多いんだね。結構飲んでる?』
「えーうん、ちょっとだけ。」
『そっか……もう9時だよ?』

ものすごく優しい。なんか、ヘソを曲げてた自分が恥ずかしくなる。

「うん。もう帰るよ。」
『じゃあ帰ったらまた連絡してくれる?誰と飲んでるの?三池さん?ミキちゃん?』
「あ、幼馴染みと、その……」
『幼馴染み!?まさかあの男!?』
「あ、……うん、そのカズと優の……」
『替わって!』
「え?なん、で?」
『いいから!』

酔った頭では畳み掛けてくる優に言い返すこともできず、私は携帯をカズに差し出す。
カズは静かに聞き耳をたてていたのに、急に携帯を差し出されて目を丸くした。

「なに?どうした?」
「なんか……優が替わってって。」

「えー……」と言いつつ携帯を耳に当て、「あ、どうも初めまして。透子の幼馴染みの佐藤和久(さとうかずひさ)と申します。……え?いやぁ。……え?」

なに?なに?
どうも雲行きが怪しい。

私と幸代さんは身を乗り出して聞き耳をたてる。

「違いますよっ!……はぁ?違うって!透子が彼氏に会えなくて辛そうだったから、俺たち……!おまえ!俺の方が年上だぞ!なんだよそれっ!」

完全に揉めている。
カズが声を荒げるなんて聞いたこともない。

「いい加減にしろよ!」

と携帯に怒鳴って切ってしまった。そして今、ハァハァと肩で息をしている。

「ど、どうしたの……?何言われた?」
あり得ないカズの形相に怯えつつ問い質すと、

「あいつ、なんだ?透子、やっぱり別れろよ!あんなやつダメだねっ!」

フンッとあっちを向いてしまった。
子供か……?




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