浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
ソファーもない小さなリビングの壁に背中をもたれさせて優は呟いた。
「しばらく土曜の夜と日曜しか会えないのか……」
そう言ってくれるのはとても嬉しい。
「でも、夏まででしょ?」
優の会社は夏には本社を東京へ移動する予定のはずだ。
「……それがさぁ……ちょっと遅れそうなんだよね……」
「え?!そうなの?」
座ったまま胡座をかいて優は項垂れた。
「先輩……社長が『来年にしようか』って……」
「来年……」
「俺、1年も遠距離……ムリ……」
そっかぁ。そんな事情があったのか。
夏には東京で一緒に住めると思っていたので、がっかり。
「退職したらすぐ飛んでくるよ。」
それしか言いようがない。
私もすごく残念なんだ。
だけど新しい社員が入らないことにはどうしようもないし、今は東京から動けない。
「毎週来るし。」
交通費嵩むけど。
「社長に早めに退職できるように頼むし。」
「……うん」
こっちも落ち込んでるのに目の前の優はもっと落ち込んでいて、結局は私が宥めることになってしまった。
いつでも会える距離にいたのに、そうじゃない今の状況。
はぁ……
優に聞こえないように小さく溜め息をついた。