浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

ソファーもない小さなリビングの壁に背中をもたれさせて優は呟いた。

「しばらく土曜の夜と日曜しか会えないのか……」

そう言ってくれるのはとても嬉しい。

「でも、夏まででしょ?」
優の会社は夏には本社を東京へ移動する予定のはずだ。

「……それがさぁ……ちょっと遅れそうなんだよね……」
「え?!そうなの?」

座ったまま胡座をかいて優は項垂れた。

「先輩……社長が『来年にしようか』って……」
「来年……」
「俺、1年も遠距離……ムリ……」

そっかぁ。そんな事情があったのか。
夏には東京で一緒に住めると思っていたので、がっかり。

「退職したらすぐ飛んでくるよ。」
それしか言いようがない。
私もすごく残念なんだ。
だけど新しい社員が入らないことにはどうしようもないし、今は東京から動けない。

「毎週来るし。」

交通費嵩むけど。

「社長に早めに退職できるように頼むし。」
「……うん」

こっちも落ち込んでるのに目の前の優はもっと落ち込んでいて、結局は私が宥めることになってしまった。

いつでも会える距離にいたのに、そうじゃない今の状況。

はぁ……

優に聞こえないように小さく溜め息をついた。
< 3 / 130 >

この作品をシェア

pagetop