浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

じっとしていられなくて、先にシャワーを浴びることにした。

上がって髪を乾かして、先に寝てやろう。

不貞腐れた私は電気を消して一人で優のベッドに入った。

「私の有給返せ!」

なんて呟いてみたけど、本当に苛立たしいのはそんなことじゃなくて。

「会いたい」って言われてわざわざ会いに来た彼女(婚約者)を放っておいて、先輩だか上司だかしらない美人の女とどこかにいる。

私は一人で布団にくるまってるのに

布団の中でぎゅっと目を瞑った。

「優の裏切り者~」

そんな優への悪口が聞こえたのか、玄関がガチャッと開いた。
「鍵開いてっ!とう……あ、」

真っ暗な室内と玄関の靴を見て、私が寝てると察したらしい。

しばらくするとベッドが沈んだ。
優が腰かけたようだ。

私は壁に向かって丸まっていて、布団は顔が半分隠れている。狸寝入りだとバレないようにスースーと息をして。

頭に優のひんやりした手が乗せられた。

「透子、ごめんな。」
ようやく聞き取れるぐらいの小さな声。

なんの「ごめん」なんだろう。

遠距離になっちゃったから?
私を一人にしたから?
彼女と何かあったから?

問いただしたい気持ちがグルグルと頭をめぐっていると、
優はそのままシャワーも浴びず床に座り込み、「参ったな……ハァ」とこれも小さく溜め息をついた。

何が参ったんだか。
浮気相手(確定?)に本命との情事を聞かれて嫉妬されて?
こっちが参ったっつーの!

ものすごく理不尽な扱いを受けてるのがイライラしてたんだけど、昨日の飲みすぎが祟って睡魔に襲われてそのまま落ちてしまった。

だから優がいつまでそこに座りこんでいたかは知らない。
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