浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
コンビニには少量の野菜や肉なんかが売っていて、最近便利だ。
スーパーが開いてないときの駆け込み寺となっている。
優の家の近くのコンビニも単身者が多いのかそういう品物が揃う。
「ほんとはスーパーが良かったんだけど……」
そうして家で野菜中心の惣菜を作ってみた。
タッパにほんの少しだけ詰めて。
洗濯物を干してから、その惣菜の残りを昼御飯にして家の掃除。
リビングからトイレ、お風呂。
隅々まで綺麗にして、最後にキッチンを整理していると
バタバタと足音がした。
ガチャン!「透子!」突然現れたのは少々お疲れ気味のスーツ姿の王子。
「あ~よかった!まだいた!透子、電話取ってくれないし、メール返してくれないから。」
「あ、掃除してて気付かなかった。ごめん。」
「掃除……。」
「いつも出掛けてて出来ないから。」
「あ、ありがとう……すごく綺麗になってる。」
そう言って笑うあなたを見ると、素直になって良かったなぁと思う。
卑屈になってるだけじゃだめなんだよね。
優はただいろいろ一生懸命なだけで、私をないがしろになんかしてないんだから。
「本当に少量の惣菜も置いてあるから……忙しいとは思うけど少しでも食べて。」
冷蔵庫を開けて重ねられた小さいタッパ2つを見せると、優は目を丸くしてからゆっくり目を細めた。
「もう作ってくれないかと思った」
いや、ほんとは二度と作るかとは思ったんだけどね……
「絶対食べるから。噛み締めて味わって食べるから!」
「いや、そんな大層な…。ほんとに少しだからツマミにして……」
私の言葉と唇を遮ったのは優の胸。
抱き締められていた。
「ありがとう、透子。で、ごめん、ほんとに。せっかく来てくれたのにこんなんで……」
嬉しさが込み上げてきた。
あぁ良かった、素直に頑張って。
優に張り付きながらしみじみと幸せを噛み締める。
だけどその幸せは長く続かなくて。
ゆっくり私の背中から手を離した。
「あ……仕事」
「……うん。途中で抜けてきちゃったから……
それと、今週末は透子のとこ行けなくなったんだ……。
開発チームとの打ち合わせが日曜になりそうで。
……透子は、来る?」
今週末は来れないって言っちゃったし、明日は夜にゆかりさんの家に行くことになった。
しかも週に2度も旅費を出せるほど私の給料は高くない。
だから
「ごめんね。今週は……」
「そっか。そうだよな……ごめん。俺の都合ばっかり。」
「ううん。来週は頑張るよ。優は仕事に戻って。体壊さない程度に頑張って。」
寂しいけどできるだけ気にしてない様子を装って笑顔で送り出す。
ほんとは納得できないけど。
「うん。ありがと。」
優はそう言うと転がっていた鞄を持ち、屈んだ拍子に私の唇に軽くキスをした。
「……行ってきます。」
未だにドキドキする優のキスと笑顔。
カチャンと閉められたドアの前で「またね」と小さく呟くと、途端に寂しさと侘しさが襲ってきた。