浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

まだ私が降りる駅に到着するにはあと10分ほどある。

トイレに行くか、車掌さんの近くまで移動するか……

「ねぇ……。さっきさぁ、百面相してたのってやっぱ恋愛絡み?」

無視、無視。
絶対喋るもんか。

私は窓の外をじっと見た。流れる景色も楽しめないけど。

「……あのさ。俺が変なやつだと思ってるのはわかるんだけど、到着するまで聞かせてよ。あんたの恋愛。」

なんでっ?なんでそんなことを赤の他人様にペラペラ喋れるというのか?

「俺、よくわかんないんだよね。彼女にもよく怒られてさ。『女の事が全然わかってない』って。」

相談?恋愛相談始めたぞ、コイツ……。

「だからさぁ……頼むよ。ちょっとだけ。ね?」

そう言うと私の顔を覗き込んできて、無理矢理視線を合わされた。

近い距離にドキッとする。

さっきとは違う私に助けを求めるちょっと弱々し気な瞳。

…………誰かに似てると思った。
捨て犬系?いや、捨てクマさん?

図体でかいのに、かわいいとこあるなぁ。
なんてその瞳をぼんやり見ていたら、ゴソゴソとジーンズのポケットから何かを出して私に差し出してきた。

胸元まで突きつけられ、咄嗟に手が出て受け取ってしまったのは一枚の名刺。
ちょっとくしゃくしゃになってますけど!

「もうすぐ着くんでしょ?俺は仙台に住んでるんだけど、最近は仕事でこっちにも時々来るから、この沿線で会えるならまた連絡して。」

や、やっぱりナンパだった~~っ!

名刺を持ったまま固まった私を助けるように、「~駅、まもなく到着します」というアナウンスが耳に入ってきた。

< 37 / 130 >

この作品をシェア

pagetop