浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「今からスナック行くの?俺も行く~!」という三池さんを吹っ切って退社した私は、スーパーで買い物を終え、シュークリームを携え誠ちゃんの元へ。
ドアベルを鳴らすとゆかりさんはすぐに出てきてくれた。
「いらっしゃい!待ってたのよ!」
そう言うゆかりさんはもう夜の顔になっていた。
「……ごめんなさい。実はこの後同伴が入ってしまって……すぐ出ないといけないの。」
「あ~金曜日ですもんね。いいですよ~」
「あの、ご飯は作ってあるから……誠一と食べてくれる?」
「了解です。」
あ~食材どうしようかな……ま、なんか作っとくか。
「じゃあ!お願いします!」そう言って私と入れ替わりに出てってしまった。
玄関に取り残された私と、キッチンに立ってる誠ちゃん。
「あ、こんばんは~」
「透子……ちゃん。」
ニコッと笑ってくれたけど、やっぱり寂しそう。
お母さんがいた方がそりゃ嬉しいもんね。
「あ、これ!シュークリーム!後で食べようね!」
「……うん!」
誠ちゃんは賢くて大人の気を汲める子だ。
それはきっといつも誰かに気を使っているから。
寂しくてもそれは言わず、仕方の無い事だと諦めることが必要とされていたから。
だから、私は誠ちゃんに望まれて拒むことなんかできない。
優が居ないところでこんな私を必要としてくれる人がいる。
それだけで私の存在価値になる。
なんだか私も誠ちゃんも寂しい人だよな……。
冷蔵庫にシュークリームを入れて、冷蔵庫に買ってきた食材を詰める。
コンロの上を見るとカレーが鍋にかけられていた。
テーブルの上にはマカロニサラダ。
「誠ちゃん、食べよう。お手伝いして~」
「うん!わかった!」
そうして私たちは夕食にした。
ガツガツと食べる様はやっぱり子供。
「誠ちゃん、そんなに急ぐと喉詰まるよ。」
ゴクゴクと水で流し込んで一息ついた誠ちゃんは「はぁ~お腹すいてて。」と笑った。
「あれ?透子ちゃんは食べないの?」
「ん?食べるよ。……誠ちゃん、名前呼んでくれるの?」
確か前は『おばさん』だったような。今日は『透子ちゃん』になってる。
「う……ん。ママが『透子ちゃんって呼んであげて』って言ってたから。」
あ、気を使ってもらっちゃった……。
「……そう?『おばさん』でもいいのに。」
「ママが『透子ちゃんは結婚もしてないし、お姉ちゃんだ』って。」
確かに嬉しいんだけど無理があるかも……。
「そっか。ありがとね。」
「透子ちゃんは結婚してないの?」
「あ、うん。もうすぐする……予定なんだ。」
「え?するの?いつ?」
「えー?いつだろ。誠ちゃんが小学校に行く前にできたらいいなぁ。」
「……ふぅん……」
それ以上、話さなくなってしまった。
ゆかりさんは結婚していない。だからそういうのがわからないのかな?
私も敢えてそこには触れずなかった。
片付けが終わって、簡単に筑前煮とオムレツを作って冷蔵庫に入れた。