浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「誠ちゃん。お風呂に入ろっか?」
「……え?透子ちゃんと?」
「え?そうだけど。」
「い、いいよ。一人で入れるし。」
「そう言わずに!洗ってあげるから!」
誠ちゃんの背中を押して風呂場へ行くとモジモジし出す。
「ホラァ~脱いで脱いで!」
「わ、わかったよ……」
幼児でも男なんだなぁ。恥ずかしがってる。
軽く洗って湯船に入ると、誠ちゃんも落ち着いてきたみたい。
オモチャで遊んだりはしないけど、子供らしく洗面器でお湯を掬ったりして遊んでいる。
「透子ちゃん」
誠ちゃんの視線とぶつかった拍子に名前を呼ばれた。
「透子ちゃんは……結婚したらもう…来ないの?」
「え?」
「ママが『今だけ』って……言ってたから。」
「ママが?」
「結婚するから来なくなる?」
誠ちゃんは寂しそうに呟いた。私はなんと言っていいのかわからなかった。だって優との結婚もハッキリ決まった訳じゃない。『いつか』っていうのは決まってるけど。
「んー。ワタシの結婚する人はね。遠くにいるんだ。もしすぐに結婚することになったら引っ越ししないと行けないからここには来れないかな……でも。」
「イヤだよ!せっかく仲良くなれたのに!」
「誠ちゃん……でもまだ決まってないの。いつ結婚するか。」
「だったら結婚しないでよ!」
「…………っ!」
誠ちゃんは裸のまま抱き付いてきた。
「透子ちゃんと結婚してあげるから!結婚しないで!」
半べそになってしがみついてくる小さな男の子にキュンとした。
プロポーズを絡めたこの可愛いワガママを言う男の子が、優に似ててちょっと照れた。
私って変態?
お風呂の中で幼児とはいえ人様の息子さんと抱き合っている。
しかもプロポーズされてて。
あー駄目だ。端から見たら完全に痴女だな。
私はそっと誠ちゃんの腕をほどき、「大丈夫。直ぐじゃないし。またしょっちゅう来るよ。」と宥めた。