浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
「透子ちゃん。こんなところに寝て……」
目を開けるとゆかりさんが私を見下ろしていた。
「あ、すいません……寝てました。」
いつの間にかウトウトしていた模様。
慌てて起き上がった。
「それはいいんだけど、電話したのに繋がらないから……」
そう言えばゆかりさんからも着信があったような。
「すぐるからも店に連絡入るし……何かあったの?焦ってたみたいだから。」
「え?店に?」
「そうよ~。『透子がゆかりさんの家にいるのはなんでだ?』って。私も接客中だったからあんまり詳しく説明できなくて。」
「そ、それはすいません……」
「いいのよ。でも、心配してたわよ。……そりゃそうか。昔の元カノの家に彼女がいるなんてビックリするわよね。」
「…ですね。」
二人して苦笑い。
そう。ゆかりさんは元カノなのに、なんで今カノと親密になってんだって話。
特に優はゆかりさんとはもう接点を持たないようにしていたのに、電話するのも勇気がいっただろうな。
「あ~すいません。まだ、なんにも説明してなくて……」
「ううん。うちの問題だもんね。ごめんね、巻き込んじゃって。透子ちゃんはやっぱりもうここには来ない方がいいわ。私もすぐるに申し訳ないし。」
「でも……」
スヤスヤと眠っている誠ちゃんを見た。
「せっかく仲良くなれたんです。」
ゆかりさんはようやく上着を脱いで座った。
誠ちゃんの頭に手をのせて優しく撫でている。
「ありがとう。透子ちゃん。誠一もね、透子ちゃんが好きになったみたい。」
「……ほんとですか?」
「前に来てくれてからね、ずっと『次はいつ来るの?』って聞いてきて。あんまりそういうこと言わない子だから驚いたわ。」
「わ……嬉しいです。子供に好かれたりしないから、私。」
「きっと透子ちゃんの事は一人の人間として好きなのかな。大人とは思ってないみたいだよ。」
フフフッと笑うゆかりさんの顔は、完全なお母さんだった。