浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

「誠ちゃんはとってもいい子ですね」

あどけない寝顔の誠ちゃんは、天使のよう。
完全にお母さんの顔になっているゆかりさんは、我が子を優しい目で見ていた。

「嬉しい。こんな母親に育てられてるのにね。っていうか、勝手に育っちゃった。」
アハハと自嘲気味に笑った。
「そんな……」

「誠一はね、私の願望なの。
私を通りすぎていった不誠実な男たちなんかじゃなくて……ただただ誠実に一人を愛せるようにって付けた名前なのよ。
こんな身勝手な親なのに、ほんとに賢くてしっかりものになってくれた。
私をいつも支えてくれる。」
「はい」
「私はこの子がいたらなんにも要らないんだ。」
「……」
「だけど、この子を育てるために働くと、一緒に居てあげられない。寂しい思いをさせてるのも知ってるんだけど……どうにもならない。」
「ゆかりさん……」
「こんなとき、父親が居たら……なんて思う。そしたら朝も昼も夜も一緒に居てあげられるのに。」

自分を責めて涙ぐんでるゆかりさんに、まさか『誠ちゃんが苛められてるかも』とは言えなかった。

何も言えないで俯いた私に、
「ごめんね。こんなこと……。ちょっと誰かに聞いてもらいたかったのかも……シャワー浴びてくるわ。」

急いで立ってお風呂場に入っていった。

ここの家が抱えてる問題は深刻だ。
私なんてちょっと遠距離恋愛ってだけで、寂しくて不安になって……。
悩みの大きさや内容は関係ないと思いたいけど、色ボケしたような自分がちっぽけな存在に思えた。

みーんな、上手くいくといいのに。

そう願った。
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