浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

恥ずかしさの余り、一呼吸置いてからマンションを出た。

するとそこには白い小型自動車が止まっていて、その前で優が立っていた。

「透子~」にこやかに手を振っている彼は…………眩しい。

格好良すぎますよ、あなた。
爽やかな白いコットンシャツにジーンズ。
普通の人が着たらフツーなのに、優が着ると「モデル?」みたいに決まってて、いやらしいったらこの上ない。
横に立つの、嫌だわぁ……
これからずっとこんな気持ちを味わうのかしら。
はやくオジサンになればいいのに。

重い足取りでそちらへ向かうと、「あれ?」
助手席に人影が見えた。

優が「こっち座って」と開けてくれたのは後部座席。
助手席に座るのは、さっきの美人だった。


どういう事?
頭にはてなマークがいっぱい浮かんできたところで、そこに押し込まれ、優は運転席に乗り込んだ。

「じゃあ出します。ごめんね、透子。会社に社長送ってくから。」

「えっっ?しゃ……?」

「だからいいって言ったのに。」
美人はふて腐れていた。

「会社の車使わせてもらってるんですから、これくらいさせてくださいよ。万里子さん、こちら俺の嫁になる透子です。透子、こちらは先輩で社長の川崎万里子(かわさきまりこ)さん。」
運転しながらご機嫌で紹介する優。
『万里子さん』って呼んでるんだ……
ちょっとチクッ胸が痛んだような気がしたけど、『俺の嫁になる』って紹介してくれてホワッと温かくなった。

「社長さん……でしたか……。初めまして……藤原透子です。」
見えていないだろうけどペコッと頭を下げた。

「……川崎です。」
簡潔に挨拶をする彼女を後ろからじっと眺めていた。
綺麗な髪……黒く光っていて、斜め後ろから見た姿もバッチリ美女。

優の可愛さに敵わない私だけど、この美女の足元にも及ばない私……。しかも社長って……。
どんだけ凄い人なの。

軽くショックを受けていたら、二人は話しだした。

「昨日上がってきたプレゼン資料、明日の昼までに纏めとけるんでしょうね。」
「もちろんです。来週なんですから朝イチで提出しますから。」
「…………昼でいいわよ。ゆっくりデートしなさいよ。」
「透子は夕方帰るんですよ。その後やりますから。」
「そう。助かる。早めに確認したかったし。」
「今日の夜10時ぐらいなら出来ますから、気になるなら先に持っていきましょうか?」

え?今日の夜?会うの?隣の部屋で?

自分に関係のない話をされているのも少し気分が悪い上に、私が帰った後二人で会うなんて。
膝の上の手をギュッと握った。
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