浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
誠ちゃんは寝るまでスマホを返してはくれず、しかも私がトイレに入っている間にどこかに隠されて、彼が寝付いてしまった後に一人で大捜索することになった。
「あ~どこに隠したのよ~‼」
起こさない程度の声で悶絶する。
どうしよう。スマホがないと生きていけない世代なのに~!
全ての情報があの中に入っているし、あんな切り方をした優にも電話入れないといけないのに~!
誠ちゃんのおもちゃ箱や、目につく引き出しも、申し訳ないと思いながら漁った。
だけど、幼児が物を隠すような場所は私にはわからなくて。
半泣きになりかけてた時、玄関が開いた。
「…………透子ちゃん」
ゆかりさんは少し困ったような顔で扉を閉めた。
静かに靴を脱いで私の前に座る。
「ゆかりさん……すいません。連絡もなく来てしまって……。週末ですし、今日も同伴とかあるかな……と。」
昨日の申し訳なさそうな表情とはうって変わって、今は眉間に皺を寄せている。
「……それでもメールの一本ぐらい欲しかったわ。」
「は…い、……すいませんでした。」
「今日も優から電話があったわ。『どうなってるんだ』って。」
私と連絡が取れないのだ。そうなるだろう。私がゆかりさんちに居ることは明白なんだから。
「誠一と居てくれて有り難いのよ、本当に。……だけど、もうムリして来なくていいのよ…」
「優がっ!優が失礼しました!きちんと言いますから!今すぐにでも!」
だって誠ちゃんは、きっと保育園での事を私に話すだけでもスッキリしているはず。
母親に言えない事を抱えてるのに誰も聞いてあげないなんて、可哀想。
「静かに。誠一が起きてしまうわ。」
口許に人差し指を立てて私を諌めた。
「誠一は……誠一はとてもあなたを気に入ってる。でもずっと一緒に居てあげられないでしょう?
誠一は強い子なのよ。大丈夫。先日は本当に助かったわ。そして昨日は『どうしても』という誠一に『一度だけ』という約束であなたに来てもらったの。
距離が近くなったら、誠一も……私もだけど貴方に甘えてしまう。
貴方には仕事も優という婚約者もいる。その波風を立てるのは私達でありたくないと思うの。
こんな言い方しか出来なくてごめんなさい。
もう、ほんとに来なくていいから……。」
ここまでゆかりさんに言わせたのは私か、優か。
だけど完全に拒否された気持ちになり、ここ数日の充実感がみるみるうちに萎んで無くなった。
「私は……役立たず、ですね。」
膝の上で握り拳を作るが、力が入らない。
脱力した私の肩にゆかりさんの手が置かれた。
「優のもとに戻って。」