浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
座り直した私は、聞いてみた。
「でも、彼女が居るんですよね?私と話すよりその方と話してみた方がいいかも。」
「話したけどさ。だって恋愛シミュレーションって何パターンも必要なんだよ?俺、そんなにスキル高くないし。」
「え?私も高くないんですが。」
「だろうね。でも話してると閃いたし、それだけでも価値あったんだよね。」
「……そうですか」
ちょっとムッとした。
なんでほぼ初対面の人にこんな言われ方しないといけないのか。
よく考えたら私はそんなにいくつも恋愛してきた訳じゃないけど、それなりだ。
彼氏はイケメンだし、浮気されてた(実際はされてない)し、強姦にも襲われかけて警察沙汰になったし、小説も真っ青の口説き文句も言われてるしっっ!
結構波乱万丈の恋愛してるわ!
「あ、なんか怒った?」
「いいえっっ!」
「そういうとこ、彼女に似てるなぁ。ね、どこで降りるの?」
私がムッとしててもどうでもいいんだな。
とんだ俺様だよ。顔はフツーだけどね!
「…………仙台ですけど。」
「あ、俺と一緒!今から家に帰るの?それともホテルに泊まるの?」
「そんなこと言えません!」
「なんでさぁ。なんかあんたと喋ってるとインスピレーション涌くなぁ。」
知らないよ!
ほんとに失礼なこの男、早く離れたい。
身勝手で身勝手で身勝手で……
「俺の救世主だよ。頭の霧が晴れたみたい。ありがとう。」
急にしおらしくお礼を笑顔で言うもんだから
「……どういたしまして」
ついほだされてしまう。
「あ、これ食べる?かわいい~だろ?」
パンダやクマの形のマカロンを差し出された。
「なにこれ!カワイイ~」
「機嫌直った?」
顔を覗き込まれ「ん?」と笑う。
この人と話してると、怒ったり喜んだり忙しい。
なんか優といるみたいだなぁ。
ちらっと掠めたそんな考えは、マカロンを食べると消えてしまった。